−話す、聴くという音声のコミュニケーション手段から、見る、顔を合わせるという「視覚の段階へ」−

●Interview
株式会社アルゴス
取締役総務部長・経営企画室長 ISO事務局・システム開発室統轄

久保 博一さん




ITで雪国における地域サービスを充実
・・・では、最初に。御社はどのような事業をされていますか?

 当社の出発点は測量設計。お客様も98%行政です。そして、妙高市という豪雪地帯にあって「快適な暮らしのためにどうしたらよいか?」と四半世紀にわたって雪氷に対する研究を進めてきました。そこに密接に関係する局地天気予報も日本海側で初めて事業化し、現在では「雪氷技術のプロフェッショナル」として克雪、利雪などのあらゆる問題のコンサルティングをしています。実際に粉雪まで入れると日本国土の3分の2に雪が降ります。また、国土の半分以上は克雪地帯で、そこには2000万人以上の人々が生活しています。しかし、雪氷技術は土木建設業の延長でやっているところが多く、専門的に特化した会社は少ない。そういう意味では特殊性がありますね。

・・・ITはどのように活用されていますか?

 最近は行政へ図面を納めるにもメールにデータを添付して送ります。その点ではスピードや効率がアップしました。また当社は北海道と仙台に事業所がありますから、IP 電話はコスト削減の面で活躍しています。当社は、NTTさんに協力いただいて妙高市でも一番に光ケーブルとIP電話を導入しました。

・・・HPにライブカメラを開設されていますが、そちらはどのような目的で?

 雪氷技術センターの社員の発想で、当社の社員は技術屋ですから新しいものが好きなのですね。また、ちょうど社屋が真南を向いていて、妙高山や火打山がよく見える。さらに局地天気予報を始めてから一般の方々の問い合せが多いのです。雪がどれくらい降っているのか、ざっくりとでも「目で見ること」ができれば口頭でお伝えするよりご理解いただけるので、始めました。
 しかし「見えること」は大きいですね。アクセス数は1日500ほどですが、天気を知りたいという人と、景色を見たい人に分かれていて。後者は旧新井市や妙高市出身で転勤や大学進学などで遠方に住んでいられる方が多い。妙高山は上越地域のランドマーク的な存在ですから、それを毎日見ることができて喜ばれているようです。
 ですから、たまにカメラが他の方向に動いていたり、ブラインドを閉めていたりすると「見えない!」って苦情のメールが来るのです(笑)。「新潟を思い出しました」というメールもいただきますからけっこうファンがいらして嬉しいですね。気象予報の問い合わせにもお応えしていますが、これらはすべてサービス。大変ですが少しでも地域貢献につながればと頑張っております。

求人費用がほぼゼロ優秀な人材に嬉しい悲鳴
・・・HPがリクルートに有効だと伺いましたが?

 そうなのです。実はHP意外で就職活動をしたことはほとんどないのですが、優秀な人材が集まって来てくれます。従来の測量部門は地元出身者が多いのですが、雪氷技術になると特殊性が高いため全国から「働きたい」と問い合わせが来るのです。現在は北は北海道、南は長崎までいますよ。そういう私も東京出身です。
 一時は嬉しい悲鳴でした。冗談で「社員をみんな入れ替えるか?」というほど優秀な人が集まりました。HPによって、悪い言葉かもしれませんが、類は友を呼ぶのです。特殊な分野ほどHPは強いですね。

・・・特殊と言えば最近は「どじょう」の畜養も始められましたね。

 ええ。手掛けてから一年半になりますが、新潟県が「健康ビジネス連峰構想」を打ち出したときに応募したのです。たまたま当社の経営者が長野との県境に近い所にすんでおりまして、山間地なのですが、その辺りはみな田んぼが捨てられて荒廃しています。しかし、逆に農薬を使わなくなったことから自然が戻って来ました。ゲンゴロウやミズカマキリといった水生昆虫をはじめ、どじょうや鳥などの生態系も。
 そのどじょうを一部の農家が上越市の割烹へ細々と卸していました。室町時代から「うなぎ一匹、どじょう一匹」と言われるほど栄養価が高いので、これを何とか事業化できないかと企画書を出したら採用されて、書いた私が担当になってしまって(笑)。

・・・「雪国どじょう」とは素晴らしいネーミングですね。

 いや、HPをご覧になる皆さんは隅々までよく見ていますよね。私は小売業出身で販促やプロモーションの経験がありますが、ネーミングや掲載する情報、その見せ方は大変に重要です。「雪国どじょう」と付けたことで妙高の清浄な水で育ったイメージが浮かぶそうで、一般の方からも「ぜひ食べたい!」と問い合わせが来ます。
 当社のどじょうの美味しさには自信がありますが、やはりプロモーションの優劣は大きく影響します。また、中小企業がどこまで広告宣伝費を用意出来るかといえば難しいものがあります。効率よく進められるという点ではHPは有効ですね。これらをDM(ダイレクトメール)など紙媒体と、いかに相乗的に活用するかでしょう。また、HPの場合、生産量の増加に伴って段階的に情報を掲載できます。例えば、個人への販売が可能になればリアルタイムに対応できる。
 当社のどじょうは非常に健康に育ち、味も良い。料亭を始め、餌として朱鷺の保護センターや全国の水族館、動物園にも納入されています。水槽で元気に泳ぎ回るので、それを食べるカワウソが追い掛けて運動不足の解消にもなるそうです。また、その姿を子供が喜ぶからと餌付けショーとして企画化した動物園もあります。

ライブカメラで高齢者の作業環境も向上
・・・畜養でITは活躍していますか?

 実はここにもライブカメラが設置してあります。狸やイタチなど天敵の監視用ですね。また、どじょうは冬眠するので冬は屋内で越冬させますが、その時は飼育状況の確認用です。とても便利ですよ。
 この地域は過疎と高齢化が進んでいますが、どじょうの畜養は稲作より格段に楽ですし、ライブカメラの設置で労力も押えられる。本格的に事業化できれば雇用増進も期待できます。また、荒れた棚田に美しい風景が戻り、水を蓄えることで防災にも役立ちます。地域活性化に役立つ事業となりますから、ぜひ成功させたいですね。

・・・それでは最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

 当社ではTV会議を導入しようと前向きに検討しています。北海道、仙台の事業所の社員を月に何度も呼んで会議することは難しい。でも電話やメールでは伝わり難いですよね。TVなら「顔が見える」し、表情が分かるというのは最高の伝達手段。やはり視覚は大切です。
 NTTさんも声と言う音から視覚まで対応されるようになったので、当社もこれに遅れないように頑張りたいと思います。


《Profile》
●株式会社アルゴス
昭和39年創立。
妙高市(旧新井市)の測量、用地・物件補償、雪氷技術、気象、GISなど、幅広い業務を通じて「よりよい雪国の創造」を目指している。また雪国とその住民のために貢献し、雪国とともに発展していきたいと願っている。
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